高校生の頃⑨ 余り物の本命

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では、9回目です。どうぞ。

目次

惨めな花束

 

頑張って頑張って、でも結局それが報われなかった時。

そういうことが少なからず存在する。

何やっているんだろうな。

後悔とも違う、ただきっとそれよりもタチの悪い

惨めさに、自分が押し潰されていく。

 

 

僕はいつも、背に花束を抱えていた。

もちろんこれは比喩だけど、そんな気持ちだった。

花束を、あなたに渡したくって。

もしこれを渡してしまったら、貴方は受け取ってくれるのだろうか。

多分受け取ってもらうことはない。

そもそも、おかしいんだ。

僕なんかより、普通の子が、普通の女の子が

彼に花束を渡すべきなんだ。

そして僕も、この花束を彼ではなく別の子へ。

女の子へ渡すべきなんだ。

そう思うと、どんどん惨めな気持ちになっていく。

叶うはずのない現実を知りつつも

淡い期待を持ってしまう自分。

本当はわかってた。でも、見て見ぬふりをした。

 

束になっていた花々のうち、花びらが、少しずつ地に落ちていく。

散ってしまった花びらは、

拾い集めても、もう元には戻らない。

背に、抱えている花束を隠して。

今日も友達として、貴方と接する。

 

この花束は、いつか誰かに受け取ってもらえるのだろうか。

 

余り物の本命

バレンタインデーの時

男の自分が、誰かにチョコレートを渡すのは変だと思った。

そんな風に、つまらない見栄を張った。

だから、ホワイトデーの時、「多く作り過ぎたから」

という名目で、好きだったやつにチョコレートをあげた。

本当は作りすぎることなんて、なくて

ただただそいつに、あげたくて作った。

言い訳でもしないと、あげられなかった。

 

「これ、俺のために作ったんだろ?笑」

 

なんて、もうほとんどバレてたけど。

でも笑いながらそう聞いて、ちゃんと受け取ってくれるのだから

それで満足だった。

 

「多めに作っちゃって、余っただけだからさ。いる?」

 

精一杯格好つけて、あげた。

 

余り物の本命。

見返りなんていらない。

ただただ、いつもの顔で、

いつもの笑った顔で、もらってくれれば

それで十分だ。

それ以上求めちゃダメなんだ。

 

 

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