大学生の頃10 偽ものの自分と、本当の自分と・後

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では続きです。

 

昔、大学生の頃に書いたもの。

そして書かれなかった、その後のことをここに。

 

 

目次

きっかけもなく、ただなんとなしに

最初は何も言うつもりはなかった。バイトのメンバーはみな学生の年がちかい人ばかり。

将来のことで挫折をしたり、何かを思い悩み抱えることもなかったであろう、温室で育ったかのような人たち。

そういう勝手なイメージが付き纏い、彼らを好きにはなれなかった。

親にも、大学にいた友達にもカミングアウトはしている。

そして学外のサークルにも入り、自分の生活は高校時代とは比べ物にならない程充実していた。

だからこそこれ以上無理に打ち明ける必要はないな、とも感じた。

それでもふとした瞬間に、なんとなしに打ち明けてみたくなった。

一緒に働いていた、同級生に。

 

何か大きな理由があったわけではない。ただシンプルに打ち明けてみたくなった。

強いていうならば、恋愛の話をするのにその全てを誤魔化すのが面倒になったからだ、というのはあると思う。

打ち明けたそいつは、人懐っこいというか、誰にも好かれるようなやつだった。自分の恋愛の話もするし、相手にもそれを聞いてくる。だからこそ最初の方はそれが面倒で、正直接し辛いところもあった。

シフトがかぶる時、かつそいつと二人だけの時間に、さらっと殊更ためることもなく打ち明けた。

「そうだったん?俺そういうの気にしないからいいと思う!」

深刻な感じもなく、驚きというか、喜びというのか

それらが混ざったような声で、そう言ってくれた。

驚きはしたんだと思う。けれど、自分が打ち明けたことを喜んでくれているような反応だった。

「どんな人と付き合ってるん?」

そこから、他の人と同じように恋愛の話が続いた。

自分の付き合っている人の話。誰かと付き合う上での苦労話。

 

自分とその人の間にあった壁が、なくなっていったのを感じた。

普通の人のように、自分も恋愛の話ができている。

嘘偽りなく、自分のことを、話せている。

 

自分から距離をとっていたのはどこかでわかっていた。

自分から作っていた壁が自然に消えていった。

自分のような同性を好きになる人は、他人から冷たく見られがちで、受け入れてもらえることもそうないのだと、

自分で自分を、否定的に見ていた。

周りは案外そうでもなくて、むしろ素の自分を出してくれることを喜んでくれた。

 

自分が一番、自分のことを卑下していたということに後になって気づいた。

思ったよりも、みんなは優しかった。

 

 

それからはバイト先での過ごしやすさが全く異なっていた。素の自分でいられることが何より大きかったのだと思う。

そのうち、他の同僚や後輩にも自分のことをさりげなく、重くならないように伝えることができた。自分のことを伝えていくうちに、慕ってくれる人も増えていき、周りとの距離が近くなっていった。

自分のことを話した結果、相手もまた、相手自身のことを打ち明けてくれたこともあった。

それが何よりも嬉しかった。

大事な話を自分には打ち明けてくれる。その感覚がこんなに嬉しいものだとは思わなかった。

きっと自分のカミングアウトを受け取ってくれたみんなも、似たような感覚だったのかもしれない。

相手にとって嬉しいのは、「信頼しているよ」というメッセージが、心の内や自分の素を打ち明ける、という行動にのせて伝えてくれることなんだと思う。

 

打ち明けることがどういうことなのか。

自分自身のことを伝えること、カミングアウトが持つ意味って、こういうことなんだろうなと

気づくことができた

そんなお話でした。

 

続きは少々お待ちください。

 

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